Origamiとメルペイ統合後を想像する
QRコードの老舗業者と、CtoCサービス会社の合併
2020年1月23日、QRコード決済会社のOrigamiと、「メルカリ」を親会社とするメルペイが合併するプレスリリースが出ました。
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メルペイ側がOrigamiの全株式を取得するとのことなので、メルペイの吸収合併ということになります。
両社ともに、QRコード決済を通じて日本のキャッシュレス社会化を推進した会社であり、いずれのサービスも利用したことのある身としては、統合後の動きはかなり気になるところです。
そこで、Origamiとメルペイの統合後の動きを、これまでの両社の歩みを背景に想像していきたいと思います。
Origamiとメルペイを比較する
Origamiとメルペイは両者ともに決済事業を生業とする会社ですが、特徴は大きく異なりますので、ユーザー目線での違いを見るために、表を作ってみました。
特徴的な違いとしては、
〇メルペイがiDを使って決済できる点
メルペイはNTTドコモが提供している電子マネー「iD」に対応しています。それによってQRコード決済のように画面を立ち上げなくても、iPhoneのWalletに登録しておけばタッチで簡単に支払いが出来ます。
また、iDと提携することでiDがこれまで獲得した加盟店での決済が可能になり、加盟店数でOrigamiを圧倒しているのが分かります。〇Origamiはチャージ手段にクレジットカードがある点
Origamiは利用する際の代金チャージにクレジットカード・デビットカードが利用できます。
銀行口座は、銀行口座が本人のものであるかの確認をするために氏名や年齢といった本人情報を入力する必要があり、これが結構大変です。このステップで断念する方も多くいます。
それに比べると、カードの登録はカード番号や名前など入力する項目は限定的で、比較的登録は簡単です。
プレスリリースからでは、今後の姿がはっきり見えない
上記のように、同様の決済事業者でありながら特徴が異なる両社ですが、どのような狙いがあって統合を行うのでしょうか。
統合のプレスリリース内に、狙いが記載されていたのでそちらを要約すると、
・地域の中小事業者へのキャッシュレス普及はまだ道半ば
・Origami・メルペイ両社の強みを融合して、独自の価値を提供、ひいてはキャッシュレス実現に寄与できる
・今後は、「Origami」を「メルペイ」に
・メルペイ・メルカリ・Origami・信金中金でキャッシュレス社会の実現
例:「メルペイ」を活用した地域イベント
「メルカリ教室」
利用促進キャンペーン
⇒地域経済の活性化/キャッシュレス化への貢献・「持続可能性の高い循環型社会」の実現
地域経済の活性化、持続可能性の高い循環型社会の実現を目指し、合併を果たしたと記載があります。
ただ、プレスリリース上の情報だけでは、Origamiとメルカリの思惑ははっきりとは見えてきません。(地域イベントや「メルカリ教室」は、合併しなくても各々で実現出来る内容ですし)
ここからは私の想像になりますが、両者が統合することによる未来を想像していきたいと思います。
信金アプリ上での、メルペイ導入
Origamiは2019年11月に、信用金庫のユーザーが振込や明細確認が出来るアプリ『しんきんバンキングアプリ』上で、Origami Payの決済機能を追加しています。
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Origamiとメルペイの統合により、メルペイのiD機能を追加することが出来れば、利用可能店舗は19万店舗⇒170万店舗へと一気に拡大
させることによる利便性を図ることが出来ます。信金にとっては口座の稼働率が上昇し、メルカリにとっては新規会員を獲得することが出来るわけなので、両者win-winになりそうなものです。
信金に限らず、地銀アプリへのメルペイ拡大
信金にOrigami Payを導入することで、win-winになる可能性を秘めていると記載しましたが、信用金庫の国内預貯金シェアは11.5%(2017年3月)*1にすぎません。更なる拡大を狙う場合、地銀へのメルペイ拡大を進めていく必要があるでしょう。
Origamiは2018年より、自らが獲得した加盟店や構築した決済手段を解放する「Origami Network」というサービスを提供しています。
これが個人的に結構凄いことだと感じております。決済のネットワークを共有して儲けを上げるスタイルは、クレジットカード会社のVISAやMaster Card、日本であればNTTデータや日本カードネットのような名だたる大企業が行ってきた方法であり、QRコード決済でこれが実現される可能性を秘めています。
www.bcnretail.com
既に〇〇Payを使っている横浜銀行(はまPay)は難しいとしても、千葉銀行や常陽銀行あたりを抑えることが出来れば、まだまだ拡大できそうな印象を受けます。
メルペイ上での、金融商品の販売
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メルペイ上で、金融商品を販売する。これも実現されるのではないかと考えています。
既にOrigamiは金融サービス専業の会社を立ち上げ済みです。当時はOrigamiアプリ上で金融商品を販売することを想定していたようですが、メルカリと統合することで、メルカリ上で金融商品を販売する可能性も秘めていると考えております。
*1:月刊金融ジャーナル増刊号 金融マップ2018年版に記載
【15万円が藻屑に?】投資先の会社が破産申立された話
ソーシャルレンディングの闇を見た
私は、投資信託や債券、株式以外にもソーシャルレンディングという投資方法で利益を得ていました。
その中でも、クラウドリースという業者に対して投資をしていたのですが、その業者がこの度破産申立となりました…
ただ、破産申立となるということは、投資した一部の資金が戻ってくるかもしれない(投資額15万円)、ということなので期待しています。
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい人(企業)と、お金を貸したい人(投資家)をマッチングさせるサービスです。
流れを説明すると、
①投資をしたい投資家が、SL会社に資金を投資する
②①で集めた資金を、企業に融資する
③企業は、融資された資金を利子を付けて返済する
④SL会社は、利子の一部を分配金として返済する
です。SL会社は、投資先(ファンド)によって様々な種類があり、私はその中でも『クラウドリース』という会社に投資をしていたわけです。
投資してから、破産申し立てされるまでのあらすじ
2018年10月 投資開始
当時私は社会人2年目でして、ようやくお金も溜まってきたので運用でもしてみようか、と思っておりました。
以前の記事でも書いたのですが、投資信託を買い始めたのが2018年10月であり、その時期と同じころです。
ただ、元手も少なく、株や不動産に一気に投資するのは気が引ける…と思っており、投資先に悩んでおりました。
その時に見つけたのが、ソーシャルレンディングです。ソーシャルレンディングであれば、少ない投資額(多くは1万円から)で着実に分配金を受け取れると考え、投資対象としました。
その中でも、
・高利回り(最大12%!)
・分配金遅延ゼロ
・毎月分配
と噂になっていたクラウドリースを選び、20万円をファンドに投資しました。今思えば詐欺師が使うセリフに見えますね…
www.crowdlease.jp
2018年12月 初めての分配
2018年10月に投資を開始して11月に貸付が始まったので、初めての分配金は12月、分配金は2,239円でした。少額でしたが、何もせずに簡単に分配金が手に入った訳ですから、ウハウハ気分です。同月に私はさらに5万円を追加し、25万円で投資を継続しました。
2019年1月 分配金が延遅延し始める
ところがです、2019年1月に入り急に投資先の分配が遅延し始めます。私が投資していた先も一部遅延が発生しました。
ただ、なんだかんだ言いながらも分配金が振り込まれていたファンドもあったので、楽観的に話を見ていました。
2019年4月 全ファンドが遅延
ただ、一向に状況は改善することなく、2019年4月に、クラウドリースで取り扱っているファンドが全て遅延する という事態が発生しました。当然私の投資先もすべて遅延です。
最終的に投資した10万円が返ってきたものの、15万円が未だ未返済です。
この遅延以外にも、クラウドリースは色々問題を起こしており、
・2019年1月 突如誤った分配金が振り込まれる
⇒いきなり5万円ほど分配金が入ってきて驚きました。
・2019年4月 代表取締役が弁護士に業務を委任、自らは退散
⇒代表が再建を放棄して逃げてしまったわけです(笑)
・2019年夏 maneoグループのソーシャルレンディング募集さえも停止
思い出すだけで色々ありました。
ファンドが遅延した理由は?
最初の遅延である2019年1月からわずか3か月の間にすべてのファンドが遅延してしまったわけですが、
よく言われているものとして
・親会社のmaneoの貸付基準強化のため
・クラウドリースがリファイナンスが多いため
という理由があります。
親会社のmaneoの貸付基準が強化
kantou.mof.go.jp
maneo社は、2018年7月に下記の業務改善命令を受けております。
(1) 今般の法令違反及び投資者保護上問題のある業務運営について、責任の所在を明確にするとともに、発生原因を究明し、改善対応策を策定実行すること。
(2) 金融商品取引業者として必要な営業者の選定・管理に関する業務運営態勢等を再構築すること。
(3) 本件行政処分の内容及び改善対応策について、全ての顧客を対象に、適切な説明を実施し、説明結果を報告すること。
(4) 顧客からの問い合わせ等に対して、誠実かつ適切に対応するとともに、投資者間の公平性に配慮しつつ、投資者保護に万全の措置を講ずること。
(5) 上記(1)から(4)までの対応について、平成30年8月13日までに、進捗状況及び対応結果について報告すること。
これを受けて、審査基準が強化された結果、グループ会社であるクラウドリースにも影響があったわけです。
2020年1月 遂に破産申立てがされる
このように全ファンドが遅延し、返済もされていないクラウドリースでしたが、2020年1月に、遂にmaneo社側が動きました。
債権者の破産申立てです。通常破産申立は債務者が行うものですが、代表取締役が脱走するような組織に進展があるわけもなく、埒が明かなくなったmaneo側が動いたわけです。
これにより、債権回収が進む目途が見えました。多少なりとも投資金が返ってくるかもしれません。
教訓
結局今でも15万円ほどの投資額が返ってきておりません。いい勉強代だったと思います。
ソーシャルレンディング投資で私が学んだことは下記の3つです。
得体の知れないものに投資をしない
⇒ソーシャルレンディングは、債務者保護の観点から投資先の情報が明確でない場合が多く、いわばブラックボックスに手を出しているようなものという認識です。ソーシャルレンディングでなくても良い投資先は沢山あります。比較検討を心がけましょう。
利回りに目を晦まさない
⇒株式の複利効果を用いれば、年率7%で10年で倍になります。焦って高利回りに飛びつかないようにしましょう。
仮に投資をするとしても、業者を分散させる
⇒maneoグループ内で投資をすると、貸付基準変更により割を食らう可能性があります。投資するにしても業者を分散させましょう。
やっぱり来た、厚底シューズ規制のお話
規制vs規制なしの読み合い
年始の箱根駅伝で、多くの箱根ランナーによって用いられていたナイキの「ヴェイパーフライ」シリーズ。
記事の最後で、『国際陸連がシューズの調査をしている』と書いたばかりでした。
umejiro330.hatenablog.com
1/15に、その靴が禁止されるかもしれないという報道が流れました。
『ヴェイパーフライ』は、国際陸連の規則に反する?
headlines.yahoo.co.jp
ヴェイパーフライは、他のシューズに比べてエネルギー消費量を少なくすることで、結果ランナーの記録を伸ばすことが出来るシューズです。
この靴を履くだけで、軽く、推進力を感じられるという、ナイキの研修成果の賜物ですね。
国際陸連のルールに反するかどうかが問題
国際陸連は、シューズについて
競技に使用されるシューズはすべてのランナーが合理的に利用可能でなければならず、不公平なサポートや利点を提供するものであってはいけない
というルールを出しており、それにこのシューズが反するのかどうかが論点となっております。
日本の陸連の規則ではどうなのか
日本の陸連の規則では、シューズの扱いはどうなっているのでしょうか。
陸連の規則では、
「競技の時靴を履く目的は、足の保護安定とグランドをしっかり踏みつけるためである。しかしながら、そのような靴は、使用者に不正な利益を与えるようないかなる技術的結合も含めて、競技者に不正な付加的助力を与えるものであってはならない。」*1
とされています。
国際陸連にしても、日本陸連にしても論点は同じで、
合理的か・不公平かどうか
というところですが、個人的な意見としては
・多くの世界で既に多くのランナーが用いており、もはや『不公平』には当たらないのではないか
・とはいえ、合理的か、不公平かは、陸連が判断すれば良い
というところですね。
大迫傑「早く決めてくれ」
ヴェイパーどうのこうの記事に疲れている人多いはず🙋
— suguru osako (@sugurusako) 2020年1月15日
どっちでも良いからさっさと決めてくれーい!
僕ら選手はあるものを最大限生かして走るだけ!それだけ!🏃♂️ https://t.co/NyLrlvqiuE
シューズの話が長引けば長引くほど、現場のランナーが振り回されることになります。なるべく早く決着を出してあげてほしいものです。
2020年箱根駅伝ランナーのシューズとその影響
ヴェイパーフライの衝撃
今年の箱根駅伝では区間新記録ラッシュが起こり、その要因がランナーがはいているシューズによるものではないか、という話があります。
toyokeizai.net
果たして、今年の箱根駅伝はどのようなシューズが履かれていたのでしょうか。
run552.com
上記でシューズ一覧を纏めてくださっているサイトがあったため、このデータを使用し、大学別のシューズ一覧を可視化してみます。
毎度のこと、画像が小さくなってしまっているのですが…ほとんどが同じ色(=同じシューズ)で占められていることが分かります。ナイキのヴェイパーフライシリーズです。
研究論文を読む
ヴェイパーフライについては色々記事になっているのですが、折角なのでヴェイパーフライのプロトタイプが作成されたときの研究論文を見てみたいと思います。
link.springer.com
論文の要旨を纏めると
・フルマラソンが2時間切れるかもしれないシューズが出来た
・過去のシューズと比べて、4%ほど走る際のエネルギー消費量が小さくなっている
・理論値では、4%エネルギー消費量が小さくなれば、3.4%タイムが早くなる*1
ということでした。
エネルギー消費量と速度の関係がよく分からなかったのですが、上記で引用されている論文*2を読んでみると、
・走る速度は、runnning economy、すなわち酸素摂取量=エネルギー消費量だけで説明することが出来る
・エネルギー消費量と速度の関係は線形比例(空気抵抗などがない場合)
としっかり記載がありました。
箱根選手は、理論に裏付けられたシューズを履いていたわけですね。
思い出される、高速水着「レーザー・レーサー」
ヴェイパーフライを履いて走った選手が好記録を出すのは、何も箱根に限った話ではなく、世界中のマラソン大会で起こっていることのようで、国際陸連がこのシューズに対する調査を行っているようです。
このニュースを見て、私は水泳であった「レーザー・レーサー」の規制を思い出しました。
今から約10年前(北京オリンピック前後)、レーザー・レーサーを着た水泳選手が皆こぞって世界新記録を樹立したため、規制がかけられることになったのです。
「ヴェイパーフライ」は「レーザー・レーサー」になってしまうのか、注目していきたいです。
参考:プロット図の作成方法
library(rvest) table<-read_html("https://run552.com/marathon/2964/") table20<-as.data.frame(html_table(table)) library(XLConnect) xlcEdit(table20)#大学名、シューズ名を一部修正しました library(ggplot2) library(esquisse)#最強の可視化ツール、ぜひともお試しください esquisser(table20) ggplot(table20) + aes(x = 大学, y = 区間, fill = シューズ) + geom_tile(size = 1L) + scale_fill_hue() + labs(x = "大学名", y = "区間", title = "箱根駅伝のシューズ 区間・大学別", fill = "シューズ名")
2020年箱根駅伝(復路)結果を可視化する
2020年箱根駅伝の復路が終わったので、結果を可視化してみます。
往路はこちら
umejiro330.hatenablog.com
大きな順位変動がある往路と比べて、復路は変動が小さいですね。箱根の山登りが終わった段階で、ほぼ勝負ありといったところなのでしょうか。個人的にも、順位変動が大きい往路の方が見ごたえがある印象が昔からあります。
それにしても、今年は区間新記録が続出した年でした。噂によればシューズを変えたのが原因だそうですが、本当にそうなのか、今後見てみます。
2020年箱根駅伝(往路)結果を可視化する
2020年の箱根駅伝(往路)が終わったので、結果を可視化してみたいと思います。
スマホでご覧になっている方は画像が小さいかもしれませんが…図から見る、今年の各校の結果を簡単に分けると下記のようになります。
①スタートダッシュに成功、その後も順位をキープ…青山、國學院、東海、帝京
②スタートダッシュに成功、その後に逆転される…創価、日体大、中央学院、早稲田
③スタートダッシュに失敗、その後逆転…東京国際、駒澤、順天堂、拓殖、中央、法政、明治
④スタートダッシュに失敗、その後も逆転できず…東洋、国士館、神奈川、筑波、日大
創価大学は1区で1位になりましたが、その後順位を落としました。
東京国際大学は3区のヴィンセントが他校を圧倒する走りで一気に順位を上げました。ユニフォームが金色で目立ちましたね。
東洋大は前半の遅れを取り戻せませんでした。数年前の強さを再び取り戻して欲しいですね。