『利回りの順序リスク』で悪夢を見る可能性(1)シミュレーション編
以前に、アメリカで流行る『FIRE』という考え方を紹介しました。
その際に、リタイアした後の資金については『利回り7%で、引き出し4%くらいならリターンが引き出し率を上回るので安心だ』と書きました。
確かに、上記は一見すると正しい話だと思うのですが、よくよく考えると捉え切れていないリスクがあることに気づきました。
それは『利回りの順序リスク』です。
資産を増やす場合であれば、1年単位でリターンのばらつきがあったとしても、数十年で平均すればばらつきは小さくなり、着実に増やすことが出来ます。
一方で、資産を使っていく場合はそうとは限りません。
リタイア後にすぐに暴落が来てその後好調な相場になった場合、どうなるのか?
逆に、リタイア後は好調な相場が来て、一定時間後暴落が来た場合どうなるのか?
それをシミュレーションしていきます。
『利回りの順序リスク』とは
利回りの順序リスクとは、退職後の初期に投資で大きな損失を被った場合、後でその損失をカバーできたとしても、退職後資金が底をついてしまうリスクです。
上記のリスクを実際にシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション
前提条件
2つのパターンA・Bを想定します。
パターンAは先に損失を出す場合、パターンBは後に損失を出す場合です。
また、条件はいずれも
・初期投資額:5,000万円
・運用期間は20年
・平均利回りは20年間でほぼ同じ(約8%)
とします。
投資額から引き出しを行わないで20年間運用した場合のシミュレーションが下記です。
20年後の最終資産額はほぼ同じです。
それでは、上記のパターンから毎年5,000万円の4%である200万円を引き出してみます。
シミュレーション
すると、下記のような結果になりました。
パターンA(先に損失)の場合、貯蓄した5,000万円は10年程度で底をついてしまいます。
それに対して、パターンB(後に損失)の場合は順調に資産を増やし続けることが出来ました。
このように、資産を増やすフェーズでは時間によってリスクを軽減できた『利回りの順序リスク』も、資産を使うフェーズではリスクを軽減することが出来ません。
まとめ
『FIRE』の考え方(=アーリーリタイア)が流行しています。
アーリーリタイア後は、蓄えた資産を使っていくことになりますが、そこで直面するのが『利回りの順序リスク』です。
使い始めて先に損失を出すのか、後に損失を出すのかで資金が底をつくかどうかが変わってきます。
それでは、『利回りの順序リスク』を減らすにはどうすれば良いのでしょうか。
次回はそのリスクヘッジ方法を考えていきます。
参考文献です。